なにやらブロードウェイの劇を映像化したとか。
出ている役者も一緒みたい。
帰宅しなかった行方不明の息子を心配して朝っぱらから警察署で座り込む母親と迷惑そうな態度で対応する新米警官、遅れて駆けつけてきた父親が中心の会話劇。
この設定で退屈どころか超エンタメで凄かったですw
面白すぎて、90分あっとゆー間でした。
地味でありながら、その一方リアルが貫かれていて迫力ありましたね。
母親が黒人で父親は白人、息子はハーフだけど、見た目は黒人ってことなんでしょうね。
息子は一切出てこないけど、息子の存在だけはちゃんとありました。
息子に何があったのか?
母親と父親、警官の間でスゲー揉めます。
基本的に揉めるだけ。
何も映画的な事件は起きないのにこの面白さを画面に表現できるのは凄いことです。
本気でギャーギャー喧嘩してるように見えて、いつ物理的な殺し合いに発展するんじゃないかって心配したほどw
その緊迫感は尋常じゃなかった。
揉めていく感じが自然だし、単純な言い争いから永遠に終わらない「人種問題」というアメリカンな伝統的な揉め事の本質みたいのをあぶりだすやり方。
やっぱ役者が超絶上手いからからこそ、このシンプルな設定で傑作と成り得た所以でしょうね。
母親役のケリー・ワシントンが「黒人」としてやんややんや、ガミガミと主張してくるので、うんざりしつつも引き込まれてしまいましたw
あんな量のセリフをよく覚えられるなぁなんてノンキに感動したりしました。
しかも、ブチ切れたり、泣きだしたりと忙しい演技しながらですからね。
役者って凄いよねw
父親役も状況によってカミサンを叱責したり、宥めたり、懐柔したり、警官側とも激しく対立してみたりと器用に立ち回ります。
新米警官役が時々顔を出して、火に油を注ぐ辺りも好きw
ヒステリックな母親へのすんげー面倒臭そうな対応の仕方がこれまた絶妙でいい味w
みんなとにかくお上手。
息子がどうなったか分からないことでの不安や警察への不満から夫婦間での攻撃に発展して、亀裂が生まれていく脚本も見事。
離婚している間柄ってことだけど、やはり性格知り尽くしてたり、秘密やら本音やらも湧いて出てきて、愛情も嫌悪も入り乱れるので、夫婦喧嘩ってのは辛らつで残酷でドラマティック。
夫婦という関係ならではのやりとりがリアル。
自然と修復していくのも夫婦らしくて凄く練られてた。
この揉め合いのストーリーに最終的にもたらされるのは、アメリカという現実でした。
黒人だから、白人だからみたいな浅はかで一方的な立場や考え方では片付けられないし、理解も納得も困難という面倒臭い問題がまさに人種。
個人が潜在的に抱えている割り切れない人種的思想みたいのが、みんなで揉めに揉める中で激しい感情と共に明るみに出てくるのだ。
最後にはタイトルの『アメリカの息子』って言葉が大きく目の前に出てくる。
その意味を真顔でちゃんと考えたりしちゃった。
アメリカならではの特殊事情が痛烈な作品だが、オレみたいなボサーッと生きてる無知でも楽しめるんだから映画って親切。
素晴らしき発明。
『アメリカの息子』は間違いなくエンタメしてた。
派手じゃないけど、そこには魅力的なドラマがある。
スゲー面白い。
オススメ。