面白かった!
いつものお人良しキャラもニヤニヤ笑いも封印。
お笑い担当の相棒もいないし、アホなコント繰り広げたり、ウケ狙いのアクションも封印。
ジャッキー・チェンが本気で怒って、周囲を翻弄しまくる。
ロンドンの爆弾テロに巻き込まれた最愛の娘の復讐に燃える中国人移民が、単身北アイルランドに乗り込んで大暴れする。
北アイルランド武装勢力の権力闘争や政府との政治的駆け引きなんかの面倒くさいゴタゴタなんぞは知らんがなと。
そんな勝手すぎるオトナな事情に対して、家族を殺された個人が求める復讐心ってのは純粋な怒りであり、圧倒的正義なのだ。
アジア最強にして最高のスーパースター、ジャッキー・チェンが復讐というテロリズムを迫力で演じる『ザ・フォーリナー 復讐者』。
本当に恐ろしかった。
この聖なる役はジェット・リーでもドニー・イェンでもダメ。
ジャッキー・チェンだからこそ深みがあり、感動的。
ジャッキーが怒りと哀しみを内に秘めながら、暴力の歴史で家族をすべて失った絶望の中、孤高の戦闘能力で犯人を追い詰める。
ジャッキーに対抗する人物はもちろんそれなりの大御所であり、実績のある名優でなければならない。
ピアース・ブロスナンなんかは完璧なチョイスだったw
横柄で、姑息で、決断力がないクセに往生際は悪い政治家役が文句なし。
過去という罪から復讐されるラスト。
もーね、あの哀愁がねw
演技のすべてが最高だった。
虚ろな目と前かがみのヨタヨタ歩きで「犯人を教えろ」と脅し続けるジャッキーの不吉な存在感に震撼しまくるピアースさんw
逃げても追ってくるジャッキーによる執拗なストーキングがこれまたスゲー恐怖w
笑顔が素敵なジャッキーも今回ばかりは真顔で、目もメチャクチャ据わっていたw
普段温厚な人が、ブチ切れた時の恐ろしさってあるじゃないですか。
何が起こるか分からない緊張感がハンパなかった。
ジャッキーだからこそ余計にねw
それでも、ギリギリの所で正気を失わないのがジャッキー流。
文字通り復讐すべき相手にのみ復讐を成し遂げるというマジメさがポイント。
ジャッキーが演じる意味が、そこにちゃんとあるのだ。
狭い宿の部屋で、コツコツと爆弾作ってるジャッキーの姿とかもあって、こんなジャッキーはかつて見たことないし、二度と見れないw
いやー、新たなるジャッキー伝説がまた生まれてしまったねコリャ。
監督のマーティン・キャンベルさんがやっぱ素晴らしい安定感。
アクション撮るのが上手すぎるし、スリリングな演出もいまだに冴えてるもん。
90年代から生き残ってる数少ない才能。
ハリウッドのアクション・エンタメの伝統を守りながら、賢く生き残ってる。
このジャンルでは相当貴重。
ゾロシリーズやボンドみたいなポップなエンタメも作っているし、『復讐捜査線』のような渋くて、不気味なスリラーも得意。
『ザ・フォーリナー 復讐者』は、ジャッキー・チェンらしいアクションが堪能できる一方で、テロ表現は凄まじく怖く、ストーリーは硬派。
社会的リアルがクールに描かれていて、悪ノリ一切なしのマジメなサスペンス大作として傑作。
キャンベル監督の本気度とジャッキー渾身な新境地の面白さを発揮して存分に楽しませてくれる。
エンディングの歌とか聴き捨て禁止!w