ロングアイランドで実際に起きた売春婦連続殺人事件を基にしたサスペンス・ドラマ。
未解決で犯人も分からんまんまという悲惨な実話です。
ラストまで観ちゃうと、事件自体もそうだけど、アメリカって呪われすぎてるなってゾッとさせられました。
娘が失踪して、お母さんが執念深く探し続ける話。
お母さんが半端なく根性あって、性格が強いので、ただの家出扱いしようとするノンキな警察にとことん押しかけて、圧力かけて、脅しまくる姿が結構痛快ですw
同じ境遇の家族たちと知り合い、協力して独自捜査を始めるお母さん。
そんな中、現場周辺からゴロゴロと遺体が見つかりまくって、埋もれていた連続殺人が発覚しちゃうという驚きの展開。
被害者が売春婦なので警察もやる気ゼロだったという裏事情。
いくらいなくなっても警察は気にかけないし、売春婦という存在がそもそも軽蔑の対象でしかないからね。
それが誰かの娘であり、姉や妹だったとしても。
協調されるのは、社会の差別的な構造に対する作り手の「怒り」でしょうかね。
置かれた環境だけで不当に扱われる人たちがいて、貧しい者は無視され、見捨てられるという現実なんですよね。
十数年にかけての間に人がいなくなって、殺されていて、そこら辺に遺棄されていたのに誰も知らなかったという怖さ。
アメリカ社会の底辺で生活する人々がいかに軽んじられているかが分かる。
誰かが叫ばないと見向きもしてくれないのだ。
そのためにはメディアの力も利用するべき。
ロングアイランドという島には金持ちが余暇を楽しむリゾート地がある一方で低賃金の労働者階級が暮らす貧困地帯があったりする。
目を背けることで何もなかったことにしたい、だけど、何かが起きている。
不都合な真実を隠しておきたいという本音が、アメリカというデカくて真っ暗にドス黒い闇の真実。
『ロストガールズ』は事件全体を描くというより、社会にとって不都合な存在であるお母さんの心情を中心にして、そんな現状を訴えてくる。
いなくなってしまった娘への責任、許し、後悔の気持ちを胸にエイミー・ライアンが主人公を熱演する。
同様の役で、まったく異なる母親像を演じる『ゴーン・ベイビー・ゴーン』を見ておくのも鑑賞姿勢として吉。
彼女の演技だけで持ってるような感じがあるけど、捜査をイヤイヤ指揮するガブリエル・バーンさんのやる気のなさとか役立たず感が実は凄くサポートしてたw
殺人ミステリーのような事件モノじゃないのでエンタメ性は低いが、エイミー・ライアンの演技は観る者を引き込む力があるし、あまりに哀しく、やるせなく、寒気を感じさせるショッキングな実話になっている。