『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』

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そんなタイトルなので、てっきりペンタゴン・ペーパーズを入手したワシントン・ポストさんが政府の隠蔽を暴いて、その内容に深く突っ込んでいく話なんだと思っていたわけです。

でも、そんなことにはならない。
入手した文書の裏づけ取って、新聞に出すだけです。

そこに至るまでが色々と大変なんですよね。
凄く面白かった。

スピルバーグが、『ブリッジ・オブ・スパイ』に続いて結構真顔で、比較的マジメなテンションで撮った作品。

意識的なのか分からないけど、話の全体像が今のアメリカを象徴しちゃってるのだ。

権力とメディアの対立という構図は凄く似ている。
報道に外圧かけてくる政府ととことんケンカを売る新聞社。

政府「こっちは天下の政府だよ!文書を掲載したら訴えるよ!」
新聞社「は?政府とかしらねーし。勝手に掲載させてもらいますが?」

みたいなねw

政府の隠蔽の事実内容を掘り下げていくというより、ジャーナリズムとしてリスクを恐れずに報道するか政府に屈するかという葛藤が中心に描かれる。

ワシントン・ポストの編集長を演じるトム・ハンクスは相変わらず巧妙で、軽妙で、観ているだけでなんか面白い。

特筆は、なんつってもワシントン・ポスト社主のメリル・ストリープだったりする。

圧倒的男社会での女性社主という緊張感とプレッシャーが絶妙に表現されていた。

役柄上、男社会の圧力に押さえ込まれようとしてもがき、発言できず、控えめに甘んじてしまう場面もある。
それでも重要な決断と確固たる思想を明確に主張するクライマックスでは、胸が熱くなり、心に訴えてくる。

この人は、やっぱ迫力が違う。
もちろん大女優の貫禄は感じさせるんだけど、それが巧い具合に抑制なんかも効かせていて、余裕はあるが隙がない。

正直あんまり好きじゃないんだけど、本作では素直に感動するしかない。
名演技だけど、鼻に付かない名演技w

ペンタゴン・ペーパーズ暴露記事の朝刊発行まで時間わずかというカウントダウン・サスペンスが仕掛けられる後半。
新聞社側でゴタゴタがありすぎて果たして間に合うのかって状況がサスペンス。
これがまた鑑賞者の心臓が止まりそうなサスペンスなので、とにかく緊迫感が半端なかった。

ラストも超絶に気が利いていて、まさかのあの作品につながる前日談としてもしっかり完成されていたのだ!
衝撃!

いやー、面白すぎたw

真顔で作っているけど、退屈とは無縁の面白さ。
盛り上げ方は誰よりも心得ている。
実話ベースでありながら優れたエンタメとして誰もが楽しめるのだ。

やっぱスピルバーグは抜かりがない。

『レディ・プレイヤー1』も近い時期に作っている辺りがスピルバーグの素敵なところ。

エンタメの天才ならではのバランス感覚が素晴らしすぎる。

どっちとも最上級エンタメなんだけど、「次元」を変幻自在のバランス感覚で描き分けるセンス。
それがスピルバーグがいまだに最高のクリエイターである所以。

今後の作品がますます楽しみになってきた。
尊敬!

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