これまた2018年のNetflixオリジナル映画では、トップクラスの傑作。
Netflixは最近バリバリ本気を出してきている気がします。
2018年なんて野心的で、向上心の高い傑作が面白いように次から次へと配信されて、嬉しい一年だった。
『ROMA』なんてその充実すぎるラインナップにおいて、年末に喰らったトドメの一発w
なんでもアルフォンソ・キュアロンさんの自伝的内容とか。
政治的混乱に荒れる70年代のメキシコシティで生活する中流家庭と若い家政婦さんの日常を描いた作品。
Netflixだからこそ配信できたともいえる個性的なスタイルの異色作。
シンプルな撮り方でありながら凄く自由な作風で、とにかく感動しかないw
劇場公開でヒットさせるには色々とハードルが高いのだ。
言語はスペイン語で、モノクロのアート作品の上、出演者はそこら辺の現地人にしか見えない無名キャストw
映画館という従来のプラットフォームから敬遠されがちな風変わりでブットんだ企画を拾いまくり、作家性の強烈な監督に自由気ままに撮らせて、ネットで配信しまくるというのがこれからの時代。
たぶんそれがNetflixスタイルw
「映画館」って価値観自体がもはや通用しなくなっているのだ。
映画館で観る映画ももちろん映画だが、映画館にこだわる時代はすでに終わりを迎えている。
ただ、キュアロン作品がNetflixに登場ってのは正直驚愕。
本当に映画業界の勢力図が本気で変わってきているのかなぁなんて感慨深く思ってしまいます。
この人の映画は『トゥモロー・ワールド』『ゼロ・グラビティ』しか観たことなくて、どちらもスケールがデカく、派手なSF大作だが、キュアロンさんの未来や人間への見方が好意的だし、愛情深かった。
『ROMA』は近未来でも宇宙空間でもないありふれた日常なんだけど、穏やかな空気の流れに普通の人々の生活感が情緒豊かに、快活に描かれる。
辛くて厳しい悲劇が起きるのが現実であり、それでも懸命に生きる庶民へ向ける眼差しは優しく、温かい。
キュアロンさんの思い入れの深さが画面から伝わってくるし、登場人物の自然体の演技が素晴らしく、退屈どころかグイグイ引き込まれて、素直な気持ちで最後まで観てしまった。
刺激的な特殊効果やCG表現は一切ないし、ドラマというドラマは発生しない。
でも、本当にジーンとしてしまうし、とても大切な話だと思う。
今年、一番素敵な一本。
得意の長回し手法が効果的で、なんでもないような場面でもまるでサスペンス映画のようにハラハラさせられたり、ハッと息を呑ませるように美しい瞬間を切り取ってみせる。
そこも凄く巧くて、いちいち記憶に残っている。
ラストの海辺のシークエンスなんてオレは絶対に、一生忘れない。
キュアロンさん、素晴らしい映画を本当にありがとう。