オレはギレルモ・デル・トロって人を分かっているつもりだったのに、今回ばかりは不安になりました。
公開前の予告編や宣伝の仕方を見る限り、「あれ?コレってオレが思っているような映画じゃないのか?」なんて疑心暗鬼に陥ってしまった。
宣伝ではいかにもファンタジックで、ロマンティックなイメージを作っていたので、観る前はティム・バートンの『シザーハンズ』的な印象が強かったんです。
ポスターにも「切なくも愛おしい究極のファンタジー・ロマンス」なんて目を疑うような文句がドデーン!と書いてあるし、もう頭が真っ白w
ギレルモ・デル・トロさんに心境の変化でも起こったのかと不安は高まりました。
挙句の果てにアカデミー賞で作品賞を受賞してしまったw
てっきり悪い冗談かと思ったんだけど、アカデミー会員の人たちは本気でしたw
この異常事態に内心物凄く焦ってしまったし、動揺も隠せませんでしたw
そんな複雑な心境だったわけで、映画館に行くのも堂々と見逃してしまったのですw
でも、晴れてリリースも開始となったわけですし、勇気出して観てみました!
断言します。
『シェイプ・オブ・ウォーター』は間違いなくギレルモ・デル・トロの映画でしたw
オレが知っているギレルモ・デル・トロだった。
変態で、根暗で、内向きで、とことん気持ちが悪い。
そんな精神がちゃんと見受けられたので一安心しましたw
地味で冴えない掃除係の女と半漁人のラブストーリーなんて気持ち悪すぎるに決まってますw
どう考えても異様な設定で、展開も不快すぎるし、ある意味ギレルモ・デル・トロならではの悪趣味の極致だと思いました。
上品な音楽やシャレた美術でかろうじて変態性を極限までごまかそうという工夫は見られたんだけど、やっぱ人間って性根は変えられないんですよねw
登場するキャラクターがいちいちグロテスク。
半漁人に夢中になりすぎてる時点で頭がおかしい人しか出てこないw
ストーリーももちろんグロテスクだし、ラストも本当に憂鬱になるというか、とてつもなく暗かったw
やってることがおぞましすぎて、ファンタジック感皆無w
だからこそ切なくもないし、愛もロマンスもヘッタクレもないわけですw
ギレルモ・デル・トロの映画って大きく2種類に分別できると思うんですよね。
『ミミック』『パンズ・ラビリンス』のような上記のヤバいセンスが小細工なしにドバドバと垂れ流されるタイプ。
『ヘルボーイ』『パシフィック・リム』のような一般向けを前提にしたエンタメ志向で、ヤバさが控えめタイプ。
『シェイプ・オブ・ウォーター』は相手がグロテスクな半漁人なのに、一応ラブストーリーという作りなので、若干中和を狙ったんだと思います。
でも、キャラクター、ストーリー、暴力表現なんかはぶっちぎりでグロテスクだし、感情移入も難しい上、異様すぎて「ロマンティック」なんてノンキな感想はまず出てこないw
マイケル・シャノンなんて『ミミック』に登場する人間に擬態する殺人虫と同じぐらいグロテスクな存在だった。
性癖が特異だったり、差別主義者だったり、サディストだったりとマトモな精神の人間がほとんど出てこない。
『パンズ・ラビリンス』の恐ろしいクリーチャーが蠢く世界とほとんど変わらない絶望感。
結局、話は変態同士が揉めて、獣姦したり、殺しあったりする奇怪な内容なんですよねw
映像的には抑制が効いているが、精神的にはギレルモ・デル・トロ史上最もヤバいのかもしれない。。。
ギレルモ・デル・トロの映画として分かった上で鑑賞すればもちろん100点満点。
だけど、ファミリー向けではないし、デートには絶対に向かない一本w
いずれにせよ、鑑賞後は変な空気になること必至w
たった独りで観て、「きもちわるっ!」って思ってみるのがオススメの鑑賞法w
『シェイプ・オブ・ウォーター』は、宣伝文句を文字通り受け入れるにはあまりにも難しいハードルの高いグロテスク映画の極みだが、これこそがギレルモ・デル・トロなのだと理解すればすべてが丸く収まるのだw
どんなジャンルなのか分からないが、とにかく変な映画。
独自の変態性の高みを目指し、結果的にアカデミー賞まで受賞して有終の美を飾ったのは凄い。
なにはともあれ、彼の変態フィルモグラフィを永遠に輝かせる運命的な一本になったのは間違いない。