『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

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『真夏の魔法』なんて素敵なサブタイトルついてますが、現実的でシリアスな話です。

低所得層が暮らすモーテルの住民と管理人さんの日常を描いたドラマ作品。

オレも一瞬でこんな暮らしに成り下がる危険があるわけで、人事には到底思えない共感必至の作品でした。

娘を養うために売春に手を染めて生活費を稼ぐ母親は一見自堕落で、酷い人間に思える。
しかしながら、定職についてちゃんと働けって言うのは簡単だが、底辺から抜けだすのって実際は凄く難しいのが分かる。

学もないし、支えもなく、環境にも恵まれない貧乏人は、精神的にも貧困に陥る。
その状態で自力で立ち直るのって困難だよなぁって思った。

背景には、貧困を救済できないという現実が立ちふさがってて、貧困者を厄介者扱いすることで見捨てているという社会のシステムがある。

作品はそんな暗く、厳しい現実を描きながら、印象としては明るく、楽しげ。

フロリダのカラッカラ陽気とカラフルな街並み、健気なまでに元気な悪ガキたちの存在が「救い」として機能しているので、貧困を忘れて楽しい気持ちにさせてくれる。
近所にはまさに夢の国ディズニーワールドがあったりして、夢なんて一個もない貧困の現実と対比になっているのが秀逸。

この映画は凄く好きですね。
ストーリーというよりも、登場するモーテルと登場人物のその佇まいが凄くいい。
作品のリアリティそのものといっていい。

これといった大きな展開や盛り上がりがないにも関わらず、本作は魅力が溢れている。

自然体の役者の演技が素晴らしすぎるのだ。
全員にアカデミー賞あげたい。
特に子役たちがあまりにも見事。

残酷すぎる現実が子供たちが生きる夢の世界にまで迫ってきて、目の前で押し潰されて行くラストなんて彼らの表情がとにかく胸を打つ。本気で泣きそうになったw

ハリウッドを代表する変態俳優ウィレム・デフォーが得意の変態を封印して、悪態をつく住民にうんざりしながらも同情的で、真っ当な常識人を演じているのも必見。

新しいウィレム・デフォーを発見するという意味でもこの映画は本当に観るべき。
個人的にかなりのお気に入りです。

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