『孤狼の血』
元気。
キャストがみんな世界観にドハマりしてて魅力しかない。
殺意バリバリの精神状態で、「おんどりゃー!」って激昂してる物騒なキャラクターがとにかく抗争したく仕方ないのだ。
昭和終幕寸前の広島の下品な界隈がこれまたいい味だしまくってた。
昭和精神の伝統ヤクザが頑張ってゴリゴリとヤクザするエキサイティングな暴力エンタメ。
はじまってすぐにどの組がどの組で、どの会がどの会で、どいつがどの組のどの会のヤクザもんなのかまるで見当もつかないまま最後まで興奮して楽しめましたw
白石監督らしいドロドロしくて、ごっついバイオレンスが活写されていて爽快。
犯罪ドラマとしても見事な作りになっていて、痛くて血なまぐさい表現だけじゃなくてちゃんとストーリーが面白い。
マル暴の血気盛んなヤクザとの癒着疑われるはみ出し刑事な役所広司と県警本部から派遣されてきた正義感の強い現場不慣れな巡査だけど、実は不正の証拠探しのために送り込まれた監察官である松坂桃季との危うく、凸凹で、相容れない相棒関係での、ヤクザ絡み金融会社の会計係の失踪事件の捜査は一筋縄に行きませんよそりゃ。
役所さんがいつ始まってもおかしくない組同士の殺し合いを防ぐために、敵対するヤクザの事務所へとこまめに乗り込んでは状況に合わせての下手に出たり、強気に出たりの懐柔、脅迫、提案が慣れた手腕w
かと思ったら、ヤクザ潰しの大義のためにはヤクザみたいな犯罪行為もいとわない。ヤクザ打倒のためにはヤクザにもなるのだ。
やりたい放題な問題刑事に見えながらのヤクザと警察との間で揺らぎ、苦悩し、神経をすり減らすだけの空しい現実に諦めや悲しみまで表現する役所さんがマジで名優にも程があるのだ。
役所さんがトレーニング・デイなデンゼル・ワシントンみたいな私利私欲の悪しき汚職刑事かと思わせての本当の自分の役割や刑事としての複雑な内なる思いが、当初は役所さんの暴力団まがいのハチャメチャ捜査を忌み嫌っていたイーサン・ホーク的に頑固に、純真無垢に法の正義を信じる監察官役の松坂君が理解していくことで、後半の復讐心メラメラに燃える松坂君に感情移入たやすくしていく作りがさすが。
人物描写が丁寧。
そして、役所さんの役所さんにしか出せない説得力というか映画的迫力って凄いんだなって改めて感動。
大傑作でした。
日本映画の最後の希望が白石和彌。
業界で最もエンタメを知り、エンタメしてる人。
汚い血や腐った死体、野蛮な人間、目を背けたくなる純粋な暴力を真っ向から描ける人はこの人しかいない。
『孤狼の血 LEVEL2』
プライムで続けて鑑賞w
個人的には1作目の方が好きだが、鈴木亮平が最高すぎるので最後まで楽しいだけの時間だった。
松坂君が役所さんの後を継いでの汚れ仕事に精を出して、時代に順応した平成ビジネスヤクザを上手い具合に統治。
そんな牙抜かれヘタレヤクザはいかがなものかと反旗を翻すのが、昭和からの名残りであり、時代逆行のおんどれヤクザ鈴木亮平でして、満を持して出所してしまう当日からいきなりの猟奇殺人決行の気合w
鈴木亮平が役作り半端ないえげつないド迫力で、作品を牛耳りますw
ヤクザ映画では一番の異常者w
ヤクザというかもはや連続殺人鬼。
鈴木亮平がずっとムダにおっかない。
この人のおかげで周囲が霞みすぎてたw
松坂君も相当攻撃的に荒々しく頑張っていたし、ヤクザと警察に利用される弟の身を心配するスナックのママ役の西野七瀬も実は凄くいい助演だった。
それでもなお、鈴木亮平が勝ってくるんよw
常識破壊でルール無用の暴走っぷりで誰にも止められないし、理屈もクソも通用しない悪魔の化身であり死神。
全編が血に飢えたヨダレ垂れ流し野獣が放し飼いになってるような緊張感と恐怖でずっとハラハラ。
やってることがほぼ全盛期のジョー・ペシなんよw
レオ・ゲッツじゃない時のジョー・ペシは全部怖いからw
ただ、やっぱりどうしても役所広司の不在によって「軽い」印象がぬぐえない。
映画としては物足りなさが残るし、若干ストーリーの雑さが気になるが、ちゃんと徹底的にエンタメしてた。
後半はターミネーターな鈴木亮平と松坂君とのドラマティックな殺し合いとなって、唐突にカーチェイスが始まるアクション映画な展開だが、キャストがすこぶる魅力的だったし、相変わらず元気の出る上質なバイオレンス演出で満足。
そして、ラストは、いるのかいないのかの伝説の一頭の狼見つけてた。
やっぱいたんだね。
孤狼。