『幼い依頼人』

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ヤバすぎる継母の恐怖政治が怖すぎ家庭内虐待による子供の死亡事件を基にしたフィクション。

『ソウォン 願い』では子供にとって絶対的な味方であり、優しさと愛そのものだった両親が、『幼い依頼人』では子供にって最悪の敵であり、父親の無関心と母親の憎悪が肉体と心を攻撃してくるのだ。

美しいユソンさんの悪魔な継母っぷりが一番素晴らしかった。
ビンタがいちいち痛そうで、こっちまで泣き叫びたくなる迫真のビンタ。

箸の華麗な使い方に人一倍ウルさいユソンさん。

あまりの粗相に我慢ならなくなって、結婚相手の姉弟をめちゃくちゃに虐待しまくって、ブチ切れての足蹴り攻撃で内臓破裂させての卑劣な弟殺し。
しかも、その罪を姉に擦り付けるという人でなし所業w

ユソンさんの颯爽とした美しさで余計に際立つ暗黒面。

大人社会に見捨てられ、継母の顔色を伺い、罪を被らされてからも脅迫と虐待に耐え忍ぶ日々の生き残り姉ダビンちゃんの孤独なサバイバルが辛い。

助けを求めるも相手にしてくれない周囲に絶望しすぎて、真実を語る口を閉ざしてしまったダビンちゃんが、亡き弟と自分のために勇気を振り絞って沈黙を破るクライマックスの証言シーンが心揺さぶるし、緊張感満点。

ちと韓国映画にありがちな笑いを意識しすぎたり、大げさな感傷演出や説教臭さが鼻に付くが、骨太な社会派サスペンスの傑作だと思う。

親という絶対的権力者による「躾」という名の暴力支配。
家庭という閉鎖社会。
見てみぬふりをする学校と地域。
無力な児童相談所。
真剣さの足りない警察。

いつものパターンだが、それが悲しい現実というか、親が子供に対して一方的に権利ありすぎてる不利益が不健全という意味では、日本もその現状は変わらないよなぁといちいちため息しながら納得。

子供を生かすも殺すも親。
子供を育てる者は虐待もするのだ。
最も安心するべき家が、心休まる穏やかな場所ではなく恐怖と死をもたらす地獄という皮肉。

「なぜ虐待するのか?」という加害者側の暴力的背景や精神的貧困に対してはあえて掘り下げられないため「全体」を俯瞰はできない作りだが、社会全体の無関心を告発して、子供という社会的に最も弱く、大人の助けがなければ自分たちのために戦えない被害者側の存在にもっと目を向けろと、真剣に考えろと本作は訴える。

「幼い依頼人」はもしかしたらすぐ近所にいるかもしれない。
毎日、どこかで同じような境遇で苦しんでいる。
守ってくれるべき親に殺されるかもと脅えながら。

そして、親という呪いであり、家という地獄から子供たちを救えないデクノボウの大人の自分がいるのだ。

主人公である法学部出たばかりの自分のことで精いっぱいの青年もそのひとり。

大手法律事務所での成功を夢見て、とりあえず腰かけのつもりで就職した児童福祉館の仕事で、児童虐待の実態や姉弟が置かれている悲惨な状況を目の当たりにして、それがいかに深刻な事態であるか頭では分かってはいても、面倒を背負いたくないがために自分の求めるキャリアを優先しちゃうわけです。

それが普通だし、悪いことでもないんだけど、青年の心はそれでも納得しないんですよね。

高学歴で上昇志向の若者が経済的で、社会的な成功への貴重なチャンスを捨てて、現実とは認めたくないぐらい過酷な環境で迫害される他人の子供たちのために自分を滅して、戦えるのか。

そんな稀有な人間に彼はなろうとする。

大金を生む価値と子供を救う価値はどっちが重いのか?

彼にとって「価値のある仕事」をする決意を表明する後半から、青年は残されたダビンちゃんのために全力疾走する。

その他大勢なデクノボウから卒業。

社会全体が彼のように立ち上がらないとならない。

「子供たちが親に殺されている」

ズッシリと心に留めて、思い知らしめる作品になっていた。

忌まわしき大人の悪意によるアザ顔に心痛むが、信頼に値する大人の善意に出会ってこぼれる笑顔が素敵なダビンちゃん役の女の子チェ・ミョンビンが、やっぱり上手すぎて震え上がる上級な演技のクオリティが圧巻。

ユソンさんの危険な色気がこれまた見事w

傑作ですねこれは。
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