911でめちゃくちゃに怒ってた当時のアメリカ政府とラムズフェルド国防長官とジョージ・W・ブッシュが、冷静さを完全に失って、アラブ系の人たちをテキトーに捕まえては、テロ事件に関わったんじゃないかって勝手に決め込んで、キューバの悪名高き強制収容所に送り付け、CIA仕込みの水責め、睡眠はく奪、まさかの強制性交までして、結局は殴る蹴るの物理的暴力という尋問どころの騒ぎじゃなくてただの人でなしな虐待繰り返してたという話がありましたと。
何かと理由でっちあげてテロ容疑かけちゃえば、法も秩序も理性も必要ないとばかりに何をやっても許されるんだと国家ぐるみでの人権無視の暴走は正義の名のもと、愛国心の名のもとに見過ごされてきたのでした。
そんなどろっどろな汚点の詳細が、10年に及ぶ不当な拘束、監禁、拷問の災難から生還したモーリタニア出身のモーリタニアンさんが自らの凄惨な実体験を赤裸々と書き記して伝えてくださったということなのだ。
その衝撃極まる内容の手記が本にもなったということです。
その映画化ですこれは。たぶんねw
主役のモーリタニアンさんがいい笑顔だし、人間的魅力豊かなので、長い時間を過ごす看守さんたちとも仲良くなる辺りが微笑ましい。
最初こそは疑わしき目で偏見と先入観で怪しげに見えちゃうんだけど、結構前半の方でテロリストどころか、ただのいい人じゃんってことが分かってくるw
愛想いいし、愛嬌もある。
それが内面から自然に溢れてている彼の人柄、品格だってことがすぐに分かるわけです。
鑑賞者もモーさんを自然と好きになっていくこと必至w
そんな愉快で気さくな人格者モーさんに対する「911」という大義名分でとにかく死刑にしたい国との裁判が始まるわけです。
長期間拘束されておきながら一度も起訴されていないモーリタニアンさんの置かれている状況に「何じゃこりゃ?」ってことで、無償弁護を引き受けることになる強気でタフな人権派弁護士ジョディ・フォスターの心意気。
友人を911で殺されたという私情で犯人に裁きを下したい気持ちを強く抱きながらも、それでもなお、神を信じる心と法の正義を重んじて、仲間たちから村八分にされても決して折れない軍部の代理人カンバーバッチさんの真っすぐさ。
それぞれの信念。それぞれの手段。
真実を貪欲に追い求める。
この二人が安心安定のどっしり構えての存在感で、CIAによる非道な拷問と虐待の被害者でありながらも人懐っこさとお茶目な性格の愛されキャラにして、アラーの偉大さを体現する「許し」の実行者モーリタニアンさんをあくまでも主役として、陰ながら支え、引き立て役に徹する作り方もスマート。
国家の不都合な真実、ドス黒い暗部を、誰にもどこにも遠慮することなく、堂々と告発しまくるこの手の骨太映画が平然と作れる土壌が羨ましいし、それこそが健全な芸術の精神であるわけで、しっかりとスリラー映画というエンタメに昇華させるのはケヴィン・マクドナルドさんの得意分野でもあるのだw
『ゼロ・ダーク・サーティ』『ザ・レポート』とセットで観たら相当濃厚な映画的活動になるかもしれないw
エンディングロールでのモーリタニアンさんの本人映像がこれまたステキなのでぜひ。