テロとスパイと中東と核開発ということで、真新しいことなんて何一つない。
そんな映画はたくさんあるわけです。
もしかしたら『アメリカン・アサシン』より良く出来た映画もあるかもしれない。
それでいてもなお、この映画は熱狂的なファンを生むことに成功した可能性が高い。
話はテロと戦うだけですw
ロシアからプルトニウムが盗まれたので、CIAがテロを防ごうよってゆーだけなんですよね。
要するに話としては『ホームランド』や『24』と大差ないw
だけど、映画表現として見るとこの作品はかなり作り手の嗜好が強いw
エンタメとしては、間違いなく誰もが楽しめないw
いい意味で偏っているので、そこが個人的には好みです。
何が言いたいかとゆーと、たぶん監督はサディストですw
それは冒頭のビーチでのテロシーンから顕著でした。
テロリストによるショッキングな無差別殺人が展開して、ビーチが地獄と化す様子に震えます。
銃殺ショットのサディスティックな撮り方とか、もーね、怖すぎました。
テロシーンにあれほどの臨場感を感じたのは初めてかもしれません。
以降もあらゆるアクションシーンがすべて暴力的。
神経を逆なでするような拷問シーンもありますw
この拷問が耐え難いほど不快w
なんとゆーか、全体的に監督の陰険で、意地悪な性格が功を奏していると思いました。
おそらく「暴力は不快でなければならない」という認識を持っているのかなと思いました。
それは正しい認識だし、この映画も鑑賞者に「テロも殺人もこんなに恐ろしいんですよね」って伝えている作風になっていた。
多くのアクション映画ってどうしてもポップになりがちですよね。
テロや殺人を題材としながらもエンタメとして見せるので仕方ないんだけど、『アメリカン・アサシン』はポップどころかリアルすぎてビビりますw
死や暴力が恐ろしい出来事として描かれるので、緊張感がハンパない。
役者がその緊張感をさらに高めてました。
タイトルロールを演じるディラン・オブライエンが最高w
この人は『メイズランナー』で主役張った人なんだけど、どう考えてもこっちの方が生き生きとしてますw
役柄もちょっと変わっていて面白いです。
個人的な復讐心のみで戦闘能力を高めた独学の素人なんだけど、そこを認められてCIAにスカウトされてしまうw
復讐しか頭にないので、ずっと命令無視して、ずっとブチ切れて、ずっと暴走しまくる新人スパイを熱演w
コイツは見た目がカッコいいのに、話に恋愛の気配が生まれず、実際に何も起きない。
この映画は一般的な女性客のニーズを一切無視しているのが潔いし、根性もあるなと思うw
ディラン・オブライエンは演技力も若手ではトップクラスなんじゃと思わせるし、アクションもこなせるので有望。
注目すべき若手の筆頭です。
もっと最高なのはスパイを教育する上司役のマイケル・キートンw
マイケル・キートンっていつの間にか凄い貫禄出してきてますよね。
『バードマン』以降すべてが傑作だし、もはやデ・ニーロやパチーノのクラスの大物感がある。
マイケル・キートンってやっぱ凄いと思います。
どこか悪にも善にも転がりそうな危うさがある。
深い闇も感じるし、同時に頼りがいもある。
『バットマン』であり、『パシフィック・ハイツ』のサイコパスであり、『ザ・ペーパー』や『スポットライト』の編集長でもあるので何をやらせても異様な説得力があるのだ。
今回もいい仕事してますw
主役の2人が予測不能なキャラクターを演じていて、話の緊張度が途切れません。
『アメリカン・アサシン』は確かによくある話だし、散々作られてきたようなスパイスリラー映画の一本かもしれない。
しかしながら、新旧の実力のある役者による迫力のパフォーマンスと作り手の妥協のない暴力表現が『アメリカン・アサシン』を傑作にしている。
作ろうと思えばいくらでも無難にエンタメに寄ることができたのに、観客に媚びない姿勢がひたすらカッコいいのだ。
そんな監督の心意気を高く評価したい一本だ。