春ということで、もちろんイーストウッド。
この時期にイーストウッド映画を観ると、やっぱ季節を意識させてくれますね。
しかも主演なんだから驚くしかない。
一体何歳なんですかこの人?w
いやー、まだまだ健在なのが驚愕。
そりゃ老人なので足腰は衰えてきてたけど、監督・役者としての現役っぷりは『グラン・トリノ』からほとんど変わらない。
この10年間に完成度の高い作品を精力的に発表してきた。
その鋭い演出力とフットワークの軽さは異常で、すでに80歳超えてる人とは到底思えない。
ということで、『運び屋』は当たり前のように傑作でした。
満を持したイーストウッド主演作として、物語としてなんか感無量というか、心の奥にまでジーンと来ちゃったw
実際にヤクの運び屋やっていて逮捕されたおじいちゃんの話が新聞に掲載されて、そこから着想を得た物語とか。
とにかくこのおじいちゃんのキャラが秀逸。
人間的魅力に溢れていて、安全運転な優良ドライバーだし、人柄が良すぎるせいで悪党にも自然と好かれてしまうのだw
だから運び屋家業も軌道に乗ってしまうw
鑑賞者は微笑ましくも心配しながら見守ることになる。
外面を優先して家族省みなかったり、女好きだったりするんだけど、この世代の男ならではの不器用な生き様というか、そこの哀愁がハンパない。
夫としても父親としても。
おじいちゃんが運び屋する理由があまりに切実なんですよね。
そう。
おじいちゃんの人生は決して他人事じゃないのだ。
おじいちゃんが色んな場面で吐露する言葉の一つ一つに「人生」を感じさせてくれる。
そして、ラストで家族にもらす一言があまりにも切ない。
その一言があまりに真実なんですよね。
真実って本当に無常で、残酷だなっていつも思います。
この普遍性の高い物語がイーストウッドによって作られて、演じられているという事実はとても重いし、大きい。
まるでイーストウッド自身のドキュメントか自伝のような説得力や迫力に満ちている。
それぐらいにイーストウッドが震えるほどの名演技なのだ。
犯罪サスペンスとしての緊張感もちゃんと一定して張り詰めているのが見事。
おじいちゃんの運び屋事情と同時にジワジワと追い詰めてくるFBIの丹念な捜査も描かれる。
難なくこなしているように見えるが、それが実は難しいのだと思う。
映画作りの支配者であり熟練者だからこその余裕。
『運び屋』
80歳超えてるどころか、もはやほぼ90歳なのに、微塵もモウロクしていない。
それどころか冴えすぎの最新作なのだw
イーストウッドにとっては、映画作り自体がもはや生活の一部なのかもしれないw
自分の好きなことをやっているだけというか。
だから余裕だし、自由奔放で、ほとんど趣味に近いw
でも、根底には表現者としての信念がある。
すでに次の作品を観たい気持ちでいっぱいだ。